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1998 年 11 月 20 日 (金曜日)


ペンシルベニアホテルをチェックアウトし、新しいホテル、マーサ・ワシントン・ホテルに移動する。朝早いので通りに人は少ない。ニューヨークは寒いと聞いていたがそれほどでもない。東京と同じくらいだ。新しいホテルではもうチェックインが可能だったのでそうして、荷物を部屋に置いた。安い割には悪くない感じだ。

ホテルから西に向かって 5 番街に出、北上してエンパイアステートビルに向かった。高いビルだからマンハッタンのどこからでも見えると考えていたが、実際は周りにもビルがあるので良く見えず、目印としてはあまり使えない。展望台が開くのは 9 時半で、少し早く着いたのでビル内のスーパーで買い物をした。歯磨き粉を家から持ってくるのを忘れたのでそれを買い、ついでに歯ブラシとガムも買った。トライデントガム 10 袋で 1 ドルちょっとという値段だ。日本では 1 袋で 100 円する。ちなみに缶コーラ 8 本詰めで 2 ドルくらいで売られている。やはりアメリカは食料品がすごく安い。トライデントガムの中には日本では姿を消したシナモン味もある。子供時代を思い出して懐かしくなった。

時間になったので展望台のチケット売り場に戻ったらずらりと人が並んでいたので焦った。いつの間にこんなに来たんだろう。早速列に並び、券を購入して展望台に登った。素晴らしい眺めを期待していたのだが、朝一番で行ったので朝もやがかかっていて、残念ながら街並みがはっきり見えなかった。高さは確かにすごい。地上ではそれほど感じなかった風もここでは強く、寒い。昼間に来れば良かった。

それから北上してニューヨーク市立図書館に行った。特に見るものはないが、トイレが使えて便利である。アメリカ人ですらない僕が何も問題なく中に入って本を閲覧したりできるのだから懐が広い。そこを出た後、道沿いの建物を眺めながらグランドセントラル駅に行った。良く映画にも登場する重厚な駅だ。中は広く、しかも天井が高くて気持ちが良い。建物自体の大きさよりも、天井の高さの方が空間の広さを感じることができる。日本では京都駅が天井が非常に高くて素晴らしいが、完全に閉じた空間ではないので高い天井の感覚はグランドセントラル駅の方があると思う。それに京都駅はそれ自体は素晴らしくても古都京都の雰囲気には合っていないのに対し、グランドセントラル駅はニューヨークの雰囲気に合っているので感じが良い。ニューヨークは予想外に古風な雰囲気のある街だ。20 世紀前半のクラシックな近代性があり、バットマンのゴッサムシティーと良く似ている。そもそもゴッサムとはニューヨークの別名だ。そんな中にグランドセントラル駅が重厚な雰囲気で立っている。駅は地階もあって、そこのトイレはいつでも人がいるので安心して使える。ニューヨークは公衆便所がほとんどなく、あっても使うのは危険だと聞いているのでグランドセントラル駅のトイレは使えると思う。

駅を出て東にずんずん進み、国連本部に行った。一定の間隔でガイドツアーがあるが、無料かと思ったら有料だったので参加しなかった。少しけちくさいか。しかしあまり面白そうではなかったので別に良いだろう。のんびりと旅行するつもりはないので時間がかかる割に面白くなさそうなものは全て却下だ。お土産屋に行ったら面白い世界地図があったので買おうかと思ったが、大きくてかさばるので結局買わなかった。旅行者は身分は気軽だが荷物は気軽に増やすわけにはいかないのだ。地下に行くとセルフサービスのカフェテリアがあり、ちょうど時間が昼頃でお腹が空いてきたのでそこで昼飯を取ることにした。食べたのはハンバーガー、タルト、果物の盛り合わせ、それにヨーグルト。安いのでついたくさん取ってしまった。ハンバーガーは全然味がなかったが、それはソースが何もかかっていないからだと後で気付いた。店内を見回すとケチャップやマスタードが置いてあるところがあった。ありふれた市販製品だ。昨日のステーキといい今日のハンバーガーといい、自分で味付けさせるわりにはろくな調味料を置いていない。タルトははっきりまずかったと言える。くるみのタルトなのだが、元々くるみは臭いから好きではないのに気付かずに取ってしまった上、妙に甘ったるくて食べれたものではなかった。僕は食べ物を残すことが非常に嫌いで、そういうことはまずしないのだが、今回はその信念を曲げて残してしまったほどの珍しいまずさだった。どうもアメリカ料理は評価できない。果物とヨーグルトは美味しかったが、これは世界共通の味だ。

冴えない昼飯を取った後、北西に歩き進んでロックフェラーセンターに行った。ここの黄金の像を描いたネクタイを持っているが、その絵柄と実際の風景が同じだったので感慨深かった。でも工事中らしく像にはやぐらが付いていて見苦しかった。像の手前のスケートリンクは行ったときはちょうど掃除中で、人々が滑り出すのをしばらく待っていたのだがいつになっても掃除をしているのであきらめて立ち去った。

そこから 5 番街を眺めながら北上した。途中、トランプタワーという高級ブティックが入っているビルに入ってみた。内装は金きらきんで、さすが土地成金のドナルド・トランプだと思わせる悪趣味な色使いだったが、あまりに率直な成金趣味なのでかえって重厚感がなくて気楽だった。ニューヨークは重厚な建物が多くて時に重苦しい感じがするので、トランプタワーみたいな能天気なのがあると良いアクセントになる。

トランプタワーからセントラルパークはすぐそこだ。話には聞いていたがやはり大きい公園である。横幅は 3 区画なので大した事はないが、縦がやたらと長い。しかもマンハッタンのど真ん中とは思えないほど静かで空気の澄んだ場所である。木々の間には至る所にリスがいる。ニューヨークは本当にリスが多い。国連本部の敷地内の林にもリスがいた。種類は良く分からないが、日本人が普通リスといって思い描くシマリスではなくて、伊豆大島のタイワンリスに似ている無地で大型のリスだ。良く見るとしっぽ以外はネズミみたいで、可愛いというよりは不気味だ。

公園では犬を連れて散歩している人が多い。放し飼いにされている犬が多いが、日本の犬のように人を見ると吠えたり匂いを嗅いだりするのはいない。ハンガリーに行ったときにも感じたが、欧米人は犬のしつけが非常にうまく、無作法な犬は全く見かけない。しつけが厳格なのだろうか。犬に甘いだけの日本の愛犬家は見習ってほしいものだ。

公園内の小道を北上するとやがてメトロポリタン美術館に着いた。この美術館はセントラルパーク内にあるのだ。もう夕方なので今日は入るつもりはない。入口のところに屋台が 1 軒あり、プレッツェルが売られていたので買ってみた。プレッツェルとは固めの塩味のパンで、温かいものにマスタードをたっぷり付けるとかなりいける。アメリカ料理に落胆していたところなのでこれは新鮮な驚きだ。ニューヨークは街角に屋台が多く色々なものが売られていて、その中でもプレッツェルはよく見かける。それがなかなか美味しいので、他の屋台料理にも期待して良さそうだ。

日が沈んで暗くなってきたので夕飯を取る料理屋を探す。アメリカ料理は食べたくないが、幸いニューヨークは多民族都市で世界の色々な料理の店があり美味しそうなところはいくらでもある。今日選んだのはホテルの近くのニュー・ディンプルという南インド料理店だ。店に入るときの "Hi!" もすっかり慣れた。カレーの一種とカブリナン(甘いインドパン)、それにマサラチャイ(インド紅茶)を注文したところ、味は日本のインド料理店と変わりなくどれも美味しかった。昨日と同じく手慣れた感じでクレジットカードで支払い、ホテルに戻った。このレストランからホテルまでは一本道なのだが、夜遅くなると人通りが少なくなってちょっと恐い。実際は危険ではないのかもしれないが、ハワイを除けば初めてのアメリカ旅行なのでそう気楽には行かない。

ホテルではシャワーのお湯が出ないという問題があったが、ホテルの人に来てもらったらただひたすら温かくなるまで水を出しっぱなしにして待てばよいということが分かった。お湯が使えるようになるのに 10 分かかる。これから毎日こうなのか? 待っている間に風邪ひくよ。



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