| フレット抜き
いよいよリペア開始です。フレット抜きニッパーを使ってフレットを抜くところからはじめます。
写真1-4.フレット抜き
フレット抜きはフレット抜きニッパーを使って力任せに抜く...のではなく、写真のようにフレットの端から刃先をフレットと指板の隙間に滑り込ませるようにし、刃先をゆっくり閉じて歯の厚みによってフレットを自然に浮き上がらせるようにして少しずつ抜いて行きます。
力任せにすると、フレットは抜けますが同時に指板のフレットミゾの淵がめくれてしまいます。これはなぜかというと、フレットの断面は次の図のような形になっていて、フレットの足に付いている「返し」の部分(これはフレットが抜けてしまうのを防ぐためのものです)が指板に引っかかってしまうからです。
 |
これを先に述べたようなやり方で抜くと、ニッパーの指板に触れている部分が指板のめくれを押さえつつ、反対側の肉厚の部分がフレットを押し上げるように作用し、指板のめくれを押さえつつ安全に抜くことができます。。
ただし、この方法も完璧ではなくどうしても少しはめくれが発生してしまいます。めくれが発生したらすぐにもとの場所に収めて瞬間接着剤を木部に染み込ませるようにして接着し加えてそれによってフレット溝の淵を補強します(写真1-5)
|
写真1-5フレットを抜いて瞬間接着剤で補強
|
写真1-6.軽くサンディング
|
瞬間接着剤が完全に硬化したら指板表面にはみ出た接着剤を軽くサンディングして取り除いておきます。このとき指板自体をなるべく削ってしまわないように注意します。
また同時に、フレット溝の内部も同様に掃除しておきます。僕はカッターを使って注意深く掃除しましたが、フレット溝を切るノコギリがあったらそれを使った方が早いでしょう。
ナットはサンディングのじゃまになるのであらかじめ取り除いておきます。ナットの接着面も同様に掃除しておくことをお忘れなく。
フレット打ち:いよいよ新しいフレットを打ちます。
写真1-7.フレット打ち
フレットの打ち方の流儀はいろいろあるようなのですが、今回は写真1-7のようにフレットを当て木を使って使ってハンマーで打ちました。一番オーソドックスな打ち方のようです。当然ネックにはかなりの衝撃が加わるので、しっかりした且つ柔らかい枕をネックの下に敷きます。僕は辞書の上にクロスを敷いてみました。ヘッドに角度があるタイプのギターは特に注意が必要です。
当て木には指板に合わせてRを付けると良いようですが、これはRなしの当て木です。まずフレットの両端を打ちこんでから中央部を打ちこむようにしました。
写真1-8.フレットを1本打ち終わったところ
フレットを打ち終わったら、指板からはみ出た部分をカットします(このときフレット抜きニッパーは使用しないように!先がつぶれてしまい、フレット抜きに使えなくなってしまいます。僕は使い古しの普通のニッパーを使いました。)カットしてから他のフレットと同様にエッジを斜めに普通のヤスリで削り、フレットエッジヤスリで滑らかになるように仕上げます。
写真1-9.フレット打ち終了
軽くサンディングした部分の指板の色が変わってしまっていますが、これは最後にレモンオイルで洗浄すると綺麗になります。
フレットのすり合わせ
フレット打ち換えの最終段階としてフレットのすり合わせを行います。
その準備としてまず、ストレートエッジを使ってフレットの狂いの具合を調査します。
その結果、僕のEX800Yは順反り状態で、1弦側の反りより6弦側の反りが大きい(すなわちネックがねじれている)と言うことが判りました。大抵のギターはこのような状態だと思います。
 |
左はネックの状態を少しオーバーに描いた図です。トラスロッドを調整して1弦側をまっすぐになるようにすると6弦側の順反りが少し残り、6弦側をまっすぐにすると1弦側が逆反りになります。
これをフレットをすり合わせることによって1弦側も6弦側もまっすぐになる様にするわけですが、フレットの高さには限りがありますので削れる量が最小限になる様にするにはどうすれば良いか考えます。 |
木部のねじれそのものは解消できませんが、フレットの頭をまっすぐにすることによって実用上問題無い様にするわけです。
今回は3弦の位置でまっすぐになる様にトラスロッドを調整しました。これにより1弦側は少し逆反りになり、6弦側は少し順反りになります。
というわけで、すり合わせでどのように削れば良いかは次の図のようになります。
|
色の濃い部分ほどたくさん削らなければならない部分です。14フレット以降はヒールやボディの部分になりますので反りは皆無と言って良いと思います。
基本的にはこの図にしたがってフレットを削り、最終的にはサンディングブロックの平面性を利用してフレットの高さが均一になる様にすり合わせを行います。サンディングブロックの平面性はあらかじめストレートエッジを使用してチェックしておきます。
写真1-10のように指板を傷つけないようにテープ(本当はマスキングテープが良いのですが、無かったので赤いビニルテープを使いました。)で指板を保護しサンディングブロックを使ってすり合わせをします。
すり合わせ中は常にストレートエッジを使ってフレットの状態をチェックします。 |
写真1-10.すり合わせ
すり合わせが終わったら溝ヤスリを使ってフレットが丸みを帯びるように削り、更に#600〜#2000のサンドペーパーを使って磨きます。
これですり合わせは終了です。ナットを取り付けて弦を張り具合を確認します。
 |
我ながら完璧な仕上がりです(^^)
1弦側のビビリも解消され、弦高を好みの高さまで下げることができるようになり弾きやすさが格段にアップしました。
そして、なんとサスティンが目に見えて伸びるようになりました。
このEX800Yは僕のグレコのコーナーでも書いたように、パツンパツンしたサスティンの短いサウンドキャラクタで、それが物足りないところだったのですが、それがかなり解消されてしまいました。これは全てのフレットをすり合わせた副次的効果だと思います。
フレットのすり合わせで、ギターがこんなに良くなるとは思いもよりませんでした。
|
最後に注意点を一言。
フレットワイヤーは思ったより柔らかく、サンディングブロックををちょっと滑らせただけでかなり削れます。思ったよりすり合わせは早く終了しますが、最後に仕上げ削りと磨きをすることを考えに入れて削り過ぎないように注意しましょう。 |