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左右と右左
右と左を表すのに、左右と右左という言葉がある。前者は漢語、後者は和語だが、なぜ語順が逆なのだろうか。重要なものを先に言うわけではない。左大臣と右大臣がある場合、中国では右大臣のほうが上だったが、日本では左大臣のほうが上だった。
実のところ、語順は文化的な重要さとはあまり関係がないのだ。言葉には言葉の規則がある。語順を決めるのは一に文法、二に発音である。右と左は並列なので、文法では順番は決まらない。それぞれの言語の発音が、和語では「右左」、漢語では「左右」に決めるのだ。
日本語では、二語を並列につなげる場合、おおむね以下の規則に従う。
- 母音で始まる語が前
- 短い語が前
古代日本語では母音連続があると一つに融合するという規則があった。
鳴海: 鳴 (nari) + 海 (umi) → nariumi → narumi
荒磯: 荒 (ara) + 磯 (iso) → araiso → ariso
嘆き: 長 (naga) + 息 (iki) → nagaiki → nageki
子音を挿入してこの融合を避けることもあった。
小雨: 小 (ko) + 雨 (ame) → koame → kosame
並列の二語は、母音連続を避ける語順を選べば、このような問題は起きない。
雨風: 雨 (ame) + 風 (kaze) → amekaze
親子: 親 (oya) + 子 (ko) → oyako
妹兄: 妹 (imo) + 兄 (se) → imose
母音で始まる語がないなら、短い語が前になる。
右左: 右 (migi) + 左 (hidari) → migihidari
妻夫: 妻 (me) + 夫 (woto) → mewoto
「めおと」は元は「めをと」で、「をと」は母音で始まる語ではない。「妻夫」も「妹兄」も女が前だが、決して昔の日本人が女性を尊重していたわけではない。単に発音で決まった語順である。
中国語を見てみよう。中国語には声調があるが、時代によって声調の数、種類は異なる。唐代の声調は四声と呼ばれ、平声、上声、去声、入声がある。その後、入声が消え、平声が陰平声と陽平声に分かれた。現代北京語でも四声と呼ぶが、第一声が陰平声、第二声が陽平声、第三声が上声、第四声が去声に当たるので、唐代の四声とは中身が異なる。中国語では一般に、並列の二字は第一声、第二声、第三声、第四声、旧入声の順に並ぶ。例をいくつか挙げよう。数字は現代北京語の声調、「入」はかつての入声を表す。
左右 (34)
男女 (23)
夫婦 (14)
天地 (14)
南北 (2入)
風雨 (13)
軽重 (14)
長短 (23)
竜虎 (23)
損益 (3入)
貧富 (24)
凹凸 (1入)
古代中国が男性中心的だったのは事実だが、それが男を前にして「男女」と言う理由ではない。また「貧富」は貧しいほうが前だが、清貧を良しとするわけではない。あくまで発音で決まることである。同じような意味でも語順が逆に見えるものがあるが、発音を考えれば何も不思議ではない。
喜怒 (34) - 哀楽 (1入)
生死 (13) - 死活 (3入)
陰陽 (12) - 明暗 (24)
毀誉 (34) - 褒貶 (13)
離合 (2入) - 集散 (24)
発音で語順が決まるのは日本語と中国語に限ったことではなく、世界的なものである。例えば英語でも発音が重要な働きを持つ。英語で語順を決めるのは、リズムだ。
| Peter, | | Paul | | and | | Mary
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| 強弱 | 強 | 弱 | 強弱
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| ladies | | and | | gentlemen
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| 強弱 | 弱 | 強弱弱
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| Simon | | and | | Garfunkel
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| 強弱 | 弱 | 強弱弱
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英語では強弱の二拍子や強弱弱の三拍子が好まれる。男性中心的だから men and women というわけではないし、淑女優先だから ladies and gentlemen というわけではない。
発音による語順は厳密な規則ではなく例外も多いが、これを知ることで、語順に価値観が表れていると即断する過ちをしないですむだろう。
参考文献:
- 中川正之、漢語の語構成、日本語と中国語の対照研究論文集、くろしお出版、1997、ISBN 4-87424-152-2
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